
武道家が、一転、絵描きの道に。
僕、小学校時代は剣道と柔道、高校時代はボクシングをしていて、ボクシングで大学に行くかもしれなかったんです。それにもかかわらず、小さい頃から絵も描き続けていました。
最初の夢は漫画家でしたから。小学校の頃は、漫画の模写をとにかくたくさんして、友達に見せていました。高校になっても、ボクシングの練習の後に、ジョギングで走った森などの絵を描く。絵を描くと、ようやく一日が落ち着いて終わる、という感じでした。今思えば、ちょっと変わっていますよね。
高校生の文化祭で、僕の描いたポスターが投票で選ばれたのが、絵をもっとやりたいと思ったきっかけでしょうか。ボクシングで推薦を取るのはやめ、東京デザイナー学院イラストレーション科に入学。長野から上京したのが 18 歳の時でした。
いろんな世界を見てみたいという欲求。
専門学校では、「こんなの知ってる」なんて思った事は、全くなかったですね。デッザンの基礎、広告や印刷の知識などを身につける事ができて、すべてが勉強になりました。
卒業後は、印刷会社とデザイン会社を併設している会社に入社したんですが、クリエイティブ系の部署は人気で、なかなか入れないんですよ。このままずっと営業を続けるのも違うな、という思いが高まって、1年程度で退社しました。
その後は、浅草で人力車を押したり、画廊を併設した銀座の料理屋で働いたり。特にこの銀座の料理屋は、お客様に画家が多くて、その方々と話ができたのは、とても勉強になりました。
やがて、本屋のバイトをはじめ、ここは5年程続けたかな。画集や雑誌を担当させてもらったので、色んなものに目を通す事ができたし、出版社の方に業界の話を聞かせてもらう事もできました。
自分の絵が思わぬ額で売れたのを聞いた時。
もちろん、バイトの後は、たくさん絵を描いていました。週末には、井の頭公園で絵を売るか、アートイベントに出展していましたし。何が次に起こるかなんて分からずに走っていた時期が6年以上続いた訳でしたが、転機は、人との出会いによって訪れたように思います。
デザインフェスタというイベントに、絵や版画を扱っている会社の方がいらしていて、新宿・伊勢丹での新人画家展示会の出展に声をかけてくれました。
展示会初日の朝、開店してすぐに、高額の絵が2点同時に同時に売れたという電話を受けたときは…「まだあまり大勢の人に見てもらっていないのに、もう売れちゃったの?!」と寂しい気持ちでした(笑)
今は、そんな事思いませんよ。著名な賞を取った事もなく、財産になる訳でもない僕の絵を、大金を出して買ってくださるのは、本当にありがたい。そんな風に僕の絵を好きになってくださった方々の為に、もっともっと良い絵を描きたいと思っています。
シナリオなしで、40分描き続けるライブ。
GEISAI という、村上隆さんが主催するアートイベントに、招待ゲストとして呼ばれて、お店の前で絵を描くパフォーマンスをして欲しい、と。これが、今の形の「ライブペイント」が生まれたきっかけです。
「ライブペイント」では、井の頭公園で知り合った金丸さんという方の音楽に合わせて、絵をどんどん描きます。キャンパスに絵を書き終わったら、それをひっくりかえし、道だったものが木の幹になったり、海だったものが草原になったり。瞬間、瞬間が完成となるわけです。
シナリオなしで 40 分描き続ける訳ですから、もちろん失敗もあります。しかし、そこから立て直している時、思わぬ展開が閃き幾通りもの絵が見える瞬間があります。そういう時は、後頭部に電流がはしり、なんとも言えない感覚に陥りますね。
このスタイルは、これからも追求して、いずれ舞台などでもやってみたいと思っています。
絵を残したいという思い。
ライブペイントとは真逆の思いなのですが、「画集のようなもので、自分の絵を残していきたい」という思いは、ずっとありました。
まずはポストカードブックを出版しまして、次に絵本を2冊出版しました。
雲の中に動物が隠れていたりなど、遊びの要素も入っていますので、お子様に読み聞かせるだけでなく、大人の方も一緒に楽しんでほしい。話自体もシンプルなので、皆さんの中でストーリーを加えていただいても良いと思っています。
絵本は、これから最もやって行きたい事のひとつですね。
SALONE AOYAMAを訪れた方へ。
僕は、月に1回、 SALONE AOYAMA でデスクトップ用カレンダーを配信しています。パソコンを立ち上げた時、仕事の合間、気持ちが疲れた時などに、僕の絵を見て空想の世界に行ってもらえればと思います。
忙しい人は空を見上げる事なんてないだろうけど、僕は、空をじっくり見る機会があるから。土の匂い、花の香り、すべて絵に還元しています。
僕が絵を描くテーマは、「やさしさ」「暖かさ」「空想する事の楽しさ」。
皆さんが、気持ちよくなるような絵を、ずっと描き続けていきたい、と思っています。
(2007.11 アトリエにて)
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