
後で役にたつとは思いもしなかった、販売員としての日々。
大学では心理学を専攻していましたが、学生って時間がたくさんあるでしょう。色んな所に顔を出すうちに、アートやデザインに興味を持つようになりました。卒業する時にはもう、ジュエリーの専門学校に通い直す事を決めていて、それが「ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」です。
昼間は働きつつ、夕方から学校という日々。雑誌で見たジオデシックというブランドを調べて、直接電話をし、ジュエリー販売のアルバイトをしました。「向いてない!できない!」と思いながら始めた販売の仕事でしたが、意外と楽しかったですね。
こちらの伝え方次第で、お客様の気持ちにダイレクトに作用するという事が分かり、「ものの良さ」を伝える努力をしました。この時の経験は、後々、思いがけず役に立つ事になりました。
皆が「売って!」と声をかけてきたリング。
学校では、課題に沿って制作をしなくてはならないのですが、私は、すぐに課題からそれていきました。(笑)当時はシルバーアクセサリーが全盛だったのですが、何もないところから紙にデザインして、手に血豆をつくって金属をたたいたりするのは、スムーズじゃない。
まず面白い石があって、変わったビーズとかがあって、それに啓発されてデザインするのが、私としては自然な事でした。
月に何度かはビーズ屋さんに通って、とりあえず気になるものを買っちゃう。で、時間がある時に自由に作っていましたね。
その中のひとつに、チョコレート色とピンク色のビーズで作ったリングがあったのですが、これが思いがけない評判を呼びました。特に売るつもりもなく作ったリングだったのですが、私の友達が、さらにその友達が、またさらにその同僚が欲しいと言ってくれて。極めつけは、ユナイテッドアローズに勤めていた友達が、「なにこれ!うちで売れるんじゃない!?私が会社につけていってみる!」と言ってくれた事でしょうか。
すぐにユナイテッドアローズの神宮前の本社に呼ばれて頼まれたのは、リング250個、ブレスレット60個!これを、1ヶ月半で作りました。 工場に出すなどという方法を知らないから、ひとりで全部作って…。一日のノルマを自分で決めたのですが、それをこなすのは、過酷でしたね。最後には、作りながらテレビを見れるまでになっていましたよ。(笑)
ひたすら、目の前の仕事を仕上げていた状態でしたが、納品し終わって、綺麗にディスプレイしてあるのをユナイテッドアローズで 見た時は、それは嬉しかったです。
突然とりつかれたアンティークの魅力。
その頃、骨董市に行って、1920年代のすごく繊細なビーズ刺繍に出会いました。 ドレスから抜き取ったりしたパーツで、そのままだと何でもないものですが、「これは何とかしなきゃ!」「何かにしてあげたい!」と強く思いましたね。
早速、気に入ったものを購入し、レースとスウェードを組み合わせてブレスレットとネックレスを作りました。そのまま自分で持っていてもしょうがないので、表参道にあるedit for lulu(エディット・フォー・ルル)というセレクトショップに持ち込みました。
この時、GINZAとか様々なファッション誌に私の作品が載ったのですが、一番感動したのは、カリスマスタイリストのソニア・パークさんの時計の広告で、私のブレスレットが使われた事でしょうか。ただ、買った素材がなくなったらそれで終わり。もう、次の素材との出逢いを求めていました。
頼まれて立ち上げた、天然石ビーズのお店。
私の母は、宝飾ジュエリーの会社に勤めていたのですが、その会社が、天然石ビーズを扱うお店を開店する事となり、「お嬢さん、そういう仕事していなかった?」と私に白羽の矢が立ちました。
天然石ビーズの仕入れから、デザイン、制作、ディスプレイ、パッケージの選定。店頭で販売もしましたし、オーダー受注、ジュエリーリフォームの相談にものりました。
とにかく、いくらでも仕事がある。作るのも。売るのも。忙しくて、自分の作品を作るのはストップしてしまいました。
でも、このお店では自分のデザインのものは自由に作って提案できたし、天然石についても詳しくなれたし、充実した日々でしたね。
2年がすぎたころ、ある程度お金もたまって来ましたし、アンティーク素材は買いためてましたから、自分で作りたいものもかたまってきて、退社させてもらいました。
デパートでのデビュー。
退社させてもらった時は、次の活動への確固たるビジョンがあった訳ではないんです。でもすぐに、知り合いに銀座・松屋さんを紹介していただきました。
7階にある「遊びのギャラリー」での出展が1年後に決定し、その前に、1階で行われた『女性が選ぶ「優れもの展」』に出展させていただきました。
この時は、大盛況のイベントの波にのって、沢山売れました。デパートで販売していた経験も、役にたったわけです。
自分の作品を買ってくれるお客様の顔も見れて、結果も出て、自信につながりましたね。この頃から、定期的な展示会を開始しました。
石好きが高じて、インドへ。
天然石ビーズの仕入れ先とは、独立してからも仲良くさせていただいてます。中国の石は、染色がしてあったり、綺麗すぎる石が多いのですが、インドの石は、ナチュラル感があって、好んで使っています。
とうとう昨年は、仕入れ先であるインド人ファミリーの住む街、宝石で有名なジャイプールにも行ってしまいました。(笑)
女性のサリーとか、建物の色が美しくて、強烈な経験でした。帰って来てみて、色に対する感覚は、影響を受けたかな、と思います。
しばらくして、インドで仕入れた素材をテーマにした展示会を開きました。
お客様に喜ばれる作品づくり。
ダイレクトにお客様に対面して作品を売っていますから、ひとりで作っていた頃よりも、「お客様に喜ばれるものを作りたい」という気持ちはすごくありますね。
今後については、またインドにも行きたいし、今までと変わらず、素材との出会いを生かしていきたい。
素敵なものをつくるデザイナーさんともたくさん知り合う事ができたので、横の関係を生かして、コラボレーションとかもできたら嬉しいなと思います。
私は、自由にデザインをしていますので、お客様には、その部分を一緒に楽しんでもらって、身につけてもらえたら嬉しいです。
(2007.12 天然石の仕入れ先にて)
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